いつもの放課後。 俺達、自称特別捜査隊は、いつもの特捜本部…ジュネスのフードコートに集まっていた。 木製の長机を陣取って、これからのテレビの中について打ち合わせ中って訳だ。 「んで、今日はどーするよ?」 俺は自分の斜め前にいる我らがリーダー、鳴上に話を振った。 鳴上は、本当に頼りになるリーダーだと思う。 不意の事にも動揺したりしないし、肝が据わってるっつーか、落ち着きがあって、 ペルソナの能力もピカイチだ。 俺の自慢の相棒でもある。ほんと、こいつにはかなわねーよ。 「そうだな…特に急ぐ事件もないし、頼まれてる物を取りに行こうか」 鳴上は、時々こうやって学校の奴らや町の人から頼みごとをされるらしい。 俺ら仲間からだけじゃなくて、他の人間からもこんなに頼りにされてる。 そんでもって、成績は学年トップ取るほど優秀で、 オカンかよ!ってくらい心が広くて、根気もあって、話上手で…。 どんだけ完璧超人だっつーの。 そんなヤツだから、当然の如く、はい、モテる訳ですね。 天下のアイドルりせちーだって、あまりの告白の難易度に「天城越え」なんてあだ名付けられた 天城だって…鳴上の魅力にメロメロだ。 ほら、今も俺の隣から、熱い熱ーい視線が鳴上に向けられて…って、里中、お前もかよ。 「んじゃ、今日の行き先は『熱気立つ大浴場』にけってーい!って事で♪」 「えぇ…マジっすか。俺、正直あんま行きたくねっす…」 「しょーがないじゃん、そこに用事があんだから」 「そうクマ。諦めがカンジンよ、カンジ」 「カンジン、カンジ…ぷふっ、うふふふっ」 いつもの調子で盛り上がるメンツに苦笑しつつ、ふと前を見れば。 がミネラルウォーターのペットボトルを片手に、薬を呑もうとしてるとこだった。 「あれ、。どっか具合でも悪いのか?」 不意にかけられた俺の言葉に、錠剤を口に運ぶのをやめてがこっちを見る。 「あ、ううん。そういう訳じゃないよ。これ、鉄剤なの」 「鉄剤?」 「最近、ちょっと貧血気味で…少しはマシになるかな、ってね」 聞き返した俺に、は困ったように笑う。 あー、くっそ。かわいーなぁ。 俺の内心の気持ちなんて気付く訳もなく、は錠剤をもう一度飲み込もうとしてた。 一粒ずつ口に入れて、水飲んで…って、一気に飲めねーのかよ!子供かよ! いや、そういうとこもまたかわいーんだよなぁ。なんて、俺もかなり重症だな、こりゃ。 「ちゃん、貧血?」 「うん…昔からそういう体質だったんだけど、最近ちょっとね」 天城の問いかけに、でも大丈夫だから、と答える。 貧血って、男にはあんまりねーもんなぁ。俺もなったことねーし。 でも、いっつも元気一直線のが薬飲んでる位だ。 やっぱ、本人にとっちゃ辛いんだろうな。 「…ひどいのか?」 の隣に座ってた天然ジゴロ…もとい、相棒が心配そうに声をかけた。 身長差があるせいで、多少覗き込むような姿勢でを見つめる鳴上。 「あ、いや、大丈夫だから!ちゃんと、戦闘には参加出来るから」 「そっか。…あんまり、無理するなよ」 優しく微笑みながらを心配する天然スケコマ…いや相棒。 くっそー、これだからこのシスコンイケメン番長はっ! 24時間、四方360度にフェロモン撒き散らしてんじゃねーよ! 「辛くなったら、俺に言って。くれぐれも、我慢しないように」 そう言って鳴上は、ぽん、との肩に手を乗せる。 いやー、ほんと尊敬するよ相棒。何その自然な流れ。 俺も見習わなくっちゃな…って、そんなとこ感心してる場合じゃなかった。 「だーいじょうぶだよ!いざとなったら、俺がきっちり守ってやっからさ」 心配すんなって。俺は最高の笑顔でに言った。 ほぼ90%あいつへの対抗心から出た台詞だな…いや、気持ちは本心だけど。 こいつを傷つける物からは、全部俺が…俺だけが守ってやりたい。 他の男になんか守らせねぇ。の一番側にいて、真っ先に支えてやりたいんだ。 そう内心ぐっと拳を握りしめて決意する俺の言葉に、は一瞬びくっ、としてこっちを見る。 え?俺何かまずい事言いました? は困惑とも照れともつかないような反応で、目を逸らしながら呟いた。 「あ、うん、その…頼りに、してる。…守ってね、花村君」 …えええええ。何、その可愛い反応。頬なんか赤くなっちゃってるし。 俺、期待しちゃうよ? 「よーっし、んじゃそろそろ行こっか、リーダー!」 「そうだな、そろそろ向かおう」 里中の気合の入った声に、いっせいに皆立ち上がる。 「うっしゃー、がんばるクマー!」 「はぁ、マジで行くんすね…」 「完二、文句言わない!」 「僕、完二君のダンジョンへ行くの初めてです。どんな所ですか?」 「えっとね…熱いけど、寒気がする所かな」 天城の訳わからん説明に笑いながらが立ち上がろうとした瞬間。 ぐらり、との身体が揺れ、後ろへ倒れこみそうになる。 危な…っ! 反射的に手を前に伸ばした次の瞬間、の身体は鳴上の腕に支えられ、 間一髪の所でそのまま後ろへと倒れるのを防いだ。 「………っ!」 俺の伸ばした右腕は、虚しく宙を掴むだけ。 「大丈夫か、」 まるで抱きとめられるかの様な姿勢で、鳴上の左腕の中で息を整える。 なんとか体勢を立て直し、額に手をやった後、笑って答えた。 「ごめん、ちょっと立ちくらみ…ありがとう、鳴上君」 「どういたしまして。それより、本当に大丈夫か?」 「大丈夫、本当に無理そうなら言うから」 「そうか、わかった。じゃ、行こう」 そう言って支えるための左腕はの背中に回したまま、フードコートの出口へと 向かおうとする鳴上。…っておい!なんだこの展開はっ!そんな偶然ありかよっ! あまりの展開に唖然としたままの俺。鳴上が顔だけこちらを振り返る。 「ほら陽介。置いてくぞ」 そう言った相棒の顔は…心なしか、勝ち誇ったようにも見えた。 …くっそ、見てろよ相棒…。 テレビん中じゃ、を守る役目は絶ッ対に!例えお前にだって譲んねーからな! 心の中でもう一度ぐっと拳を握りしめて、俺は皆の後を追っかけた。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 初の陽介SSです。わーいめでたい…はずなのになんでこう陽介の話になると いじめかいじられ話になってしまうんでしょうか…。愛ゆえなのか? 陽介に対しては、ちょっと情けなくて、でも人情に熱い彼が管理人は大好きなので 基本、陽介SSはこういう感じのお話が多くなるような気がします。 かっこいい陽介も書きたいんだけどなぁ。どうしても3枚目っぽくなっちゃうのよね。 一応、このお話の中ではヒロインちゃんとはすでに内心両想いです。 次はもっと甘いお話が書けたらいいな。 2011/10/18 |